DENTAL CARE FOR PEOPLE WITH DISABILITIES
障害のある方の歯科診療は、通うこと自体が負担になることがあります。ご自宅・障害者グループホーム・障害者支援施設へ、歯科医師と歯科衛生士が伺い、ご本人のペースに合わせて進めていきます。
SUMMARY
このページの要点
はじめに
診療台に横になれない。見知らぬ場所の音や光がつらい。順番を待つ時間が耐えられない。口の中に手や器具が入ることに強い抵抗がある——障害のある方が歯科から足が遠のく理由は、ひとつではありません。「うちの子は歯医者が苦手で」「本人が嫌がるので何年も行けていない」というお話は、ご家族や支援者の方から繰り返し伺ってきました。
けれども、苦手なことには必ず背景があります。何が負担になっているのかを事前に共有していただければ、環境を変える、順番を変える、時間を分けるといった工夫で、受けられる診療の幅は広がります。当院の訪問歯科診療は、その工夫の起点を「通い慣れた場所へ伺うこと」に置いています。歯科医師と歯科衛生士がご自宅や施設へ出向き、外来と近い内容の診療を、ご本人が過ごしている環境の中で行います。
このページでは、どのような方が対象になるのか、実際にどのような進め方をするのか、費用はどうなるのか、そして当院では対応が難しく専門機関へおつなぎするのはどのような場合かを、順にご説明します。
01 — WHO
身体障害・知的障害・精神障害・発達障害・重症心身障害などにより、外来への通院や歯科治療そのものが負担になる方が対象です。移動に介助が必要な方だけでなく、移動はできても慣れない環境での診療が難しい方も含まれます。
年齢は問いません。お子さんから成人の方まで、幅広い年代の方に伺っています。障害支援区分の認定を受けているかどうかも問いません。手帳の有無や区分だけで対象が決まるものではなく、心身の状態から見て通院が難しいかどうかを歯科医師が個別に判断します。「対象になるか分からない」という段階のご相談で構いません。
02 — FAMILIAR PLACE
当院はご自宅のほか、障害者グループホーム、障害者支援施設(入所)、生活介護事業所などへ伺っています。ポータブルの歯科ユニットや吸引装置を持参するため、居室やリビング、日中活動をしている部屋など、その方が落ち着いて過ごせる場所で診療を始められます。
環境が変わること自体が大きな負担になる方にとって、この違いは小さくありません。待合室で順番を待てない、車での移動が難しい、外出のたびに数人がかりの介助が必要——こうした課題を、訪問という形にすることで減らせる場合があります。ご本人の負担だけでなく、付き添うご家族や支援者の方の負担が軽くなることも、多くいただくお声です。
03 — AT YOUR PACE
初回から治療を始めるとは限りません。まずはお口の中を見せていただくだけ、あるいは器具に触れていただくところから始めることもあります。ミラーを持ってみる、鏡で自分の歯を見る、音を聞いてみる——そうした段階を一つずつ重ねていく進め方です。
当院では、無理に押さえつけて治療を進めることはしません。ご本人のペースに合わせ、1回あたりの時間を短くして複数回に分けることを基本としています。処置が必要な場合も、痛みや腫れの有無など緊急性を見ながら順序を組み立てます。
そのため、日頃のご様子を事前に教えていただけると大変助かります。コミュニケーションの取り方(言葉・絵カード・身振りなど)、苦手な音や感覚、パニックのきっかけになりやすいこと、落ち着きやすい体勢や声かけ。ご家族や支援者の方が普段されている工夫は、私たちにとって最も有用な情報です。
04 — ORAL FINDINGS
診療の場面では、次のような状態が見られることがあります。いずれも必ず起こるものではなく、その方の状態や生活によって大きく異なります。
こうした状態は、服用中のお薬や生活の状況と切り離せません。お薬手帳や、日頃の食事・生活のご様子をあわせて伺いながら、その方に合った対応を考えていきます。
05 — WITH SUPPORTERS
歯科が関われるのは、伺った時間だけです。お口の状態を保つうえで大きな役割を果たすのは、日々そばにいらっしゃるご家族・世話人・支援員の方の関わりです。
そこで当院では、歯科衛生士が日常の口腔ケアの方法を具体的にお伝えしています。どの歯ブラシが使いやすいか、どの体勢だと磨きやすいか、どこまでご本人にお願いしてどこから介助するか。人手や時間の制約もふまえ、続けられる範囲でご提案します。訪問後には所見や次回の予定を記録として共有し、必要に応じて相談支援専門員の方とも情報をやり取りします。
グループホームや入所施設については、入居者の方をまとめて定期的に伺う形もご相談いただけます。訪問の頻度や時間帯、日中活動との兼ね合いなど、施設の運営に合わせて調整します。
02 — SELF CHECK
当てはまるものがあれば、判断せずにご相談ください。訪問での対応が可能か、外来のほうが適しているかも含めて、お話を伺ったうえでご案内します。お電話の時点で費用はかかりません。
03 — WHERE WE VISIT
生活の場がどこであっても、通院が難しい状況であれば訪問の対象となる可能性があります。主な訪問先は次のとおりです。
ご家族と暮らすご自宅へ伺います。居室・リビングなど、落ち着ける場所で診療します。
世話人の方と連携し、入居者の方の定期的な診療・口腔ケアをご相談いただけます。
施設内の医務室や居室で診療します。訪問日程は施設のご都合に合わせて調整します。
日中活動の場での対応もご相談いただけます。活動時間との兼ね合いを調整します。
ご相談は、ご本人・ご家族はもちろん、グループホームの世話人の方、施設の職員の方、相談支援専門員の方など、どなたからでもお受けしています。実際には、支援者の方からのお問い合わせが多くを占めます。「本人は痛いと言わないが、食べ方が変わってきた」といった気づきが、受診のきっかけになることも少なくありません。
訪問エリアや診療体制については訪問歯科診療のご案内を、施設単位でのご検討については施設への訪問歯科のご案内をご覧ください。日常の口腔ケアの内容は訪問での専門的口腔ケアにまとめています。
04 — REFERRAL
訪問という形をとっても、すべての方にすべての処置を行えるわけではありません。当院では、できることとできないことを、はじめの段階で正直にお伝えするようにしています。
たとえば、体動が大きく安全に器具を扱えない場合、複数本の抜歯や外科的な処置が必要な場合、全身状態の管理を伴う対応が求められる場合などは、全身麻酔や静脈内鎮静法といった管理下での治療が適していることがあります。こうした場合は、大学病院の障害者歯科・口腔外科や、地域の口腔保健センターなど、設備と体制の整った専門機関をご紹介することがあります。
また、訪問で応急的な処置を行いながら、並行して専門機関での治療につなげるという組み立て方をとることもあります。どこで何を受けるのが最も負担が少ないかを、ご本人・ご家族・支援者の方と一緒に考えるところから始めます。
紹介先での治療が一段落した後の定期的な口腔ケアや経過の確認を、当院の訪問で引き継ぐこともできます。「一度断られたことがある」という方も、状況が変わっている場合がありますので、あらためてご相談いただければと思います。
05 — COST
障害のある方への訪問歯科診療にも、医療保険が適用されます。自由診療ではありませんので、通常の自己負担割合でご利用いただけます。
訪問1回ごとの基本料にあたる「歯科訪問診療料」は、1割負担の方で1回あたり約1,000円前後が目安です。この金額は、訪問先の種別や、同一の建物内で同じ日に診療する人数などの区分によって変動します。これに、実際に行った処置の内容に応じた費用が加わります。
当院では、交通費・出張費はいただいておりません。訪問にかかる移動の費用を別途ご請求することはありませんので、ご負担いただくのは保険診療分のみです。
SUBSIDY
障害者医療費助成制度について
お住まいの自治体によっては、障害のある方の医療費を助成する制度(名称・内容は自治体により異なります)を利用できる場合があります。この制度の対象となる場合、歯科の自己負担がさらに軽くなる、または負担なくご利用いただけることがあります。
助成の対象となる方の範囲、助成の額、申請の方法は自治体ごとに定められています。詳しくはお住まいの市区町村の窓口にご確認ください。受給者証をお持ちの場合は、訪問時にご提示いただければ、当院での取り扱いをご案内します。
※ 上記は2026年7月時点の制度に基づく一般的な目安です。処置の内容・回数、保険の種別、自己負担割合により実際の金額は異なります。制度改定が行われた場合は改定後の取り扱いが優先されます。費用の全体像は訪問歯科の費用と保険もあわせてご覧ください。
SUPERVISOR
監修:桐生 賢太(きりう けんた)
つむぎ歯科クリニック 院長/歯科医師
訪問歯科診療を専従の歯科衛生士チームとともに運営。ご自宅・施設への訪問診療を通じ、ご家族・支援者の方との連携を重ねています。院長プロフィール →
最終更新日:2026年7月27日
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