つむぎ歯科クリニックTSUMUGI DENTAL CLINIC

FOR FACILITY STAFF

誤嚥性肺炎を防ぐ、
施設口腔ケアの実践。

誤嚥性肺炎は、施設利用者さんの生命予後に直結する課題のひとつです。発症メカニズム、現場で守りたい実践のコツ、避けたい関わりを整理しました。

FOR WHOM

この記事の対象

INTRODUCTION

口腔ケアが、
肺炎予防の最前線にある。

誤嚥性肺炎は、唾液や食物・胃内容物が気道に入ることで肺に炎症が起きる疾患です。特に高齢の施設利用者さんでは、嚥下機能の低下と免疫機能の低下が重なり、発症リスクが高いことが知られています。

発症の引き金になるのは、誤嚥そのものよりも、口腔内に蓄積した細菌叢の量と質です。歯垢・舌苔・義歯のぬめりに含まれる嫌気性菌が、誤嚥された際に肺で増殖し肺炎を起こすと考えられています。つまり「誤嚥を完全に防ぐ」のではなく、「誤嚥しても重症化しにくい口腔環境を保つ」ことが、施設口腔ケアの目的のひとつです。

本記事では、施設で勤務する皆さまが日々の業務のなかで実践できる口腔ケアのポイントを、発症メカニズム・避けたい関わり・実践のコツ・チェックリストの順にまとめました。

監修

歯科医師 桐生 賢太

明海大学歯学部卒・2021年つむぎ歯科クリニック開業・訪問歯科を中心に診療

MECHANISM

発症のメカニズムを
順に整理する。

  1. 1. 口腔細菌叢の増加歯磨きが不十分・唾液量が少ない・義歯が清掃されていないなどの背景で、嫌気性菌を中心とした細菌叢が増えていきます。
  2. 2. 不顕性誤嚥(むせない誤嚥)就寝中などに、唾液とともに口腔細菌が気道に流れ込むことがあります。本人も周囲も気づかないまま起きるため「不顕性誤嚥」と呼ばれます。
  3. 3. 肺での菌増殖と炎症気道清浄機能や免疫力が低下していると、誤嚥された細菌が肺で増殖し、炎症を起こします。
  4. 4. 全身状態への波及発熱・酸素飽和度の低下・食事量の低下・ADLの低下が連鎖し、入院・廃用が進む流れにつながります。

REFERENCE

Yoneyama T らによる Lancet 1999;354(9177):515 の報告では、特別養護老人ホーム入所者を対象に介護職員等による口腔ケアを実施した群で、対照群と比較し肺炎の発症率および肺炎関連死亡率が低かったとされています。日々の口腔ケアが施設レベルでの予防策となりうることを示した代表的な報告として、現在も広く引用されています。

  1. 01 — POSTURE

    仰臥位のままの口腔ケア

    ベッドをフラットにしたまま口腔ケアを行うと、洗浄液や唾液・歯垢を誤嚥するリスクが高まるとされています。ギャッジアップ30度以上を基本とし、頸部を軽く前屈させるポジションが安全とされています。

  2. 02 — TOO MUCH WATER

    大量の水で含嗽させる

    口腔機能が低下している方に大量の水で含嗽(ぶくぶくうがい)を求めると、誤嚥のリスクが上がります。少量の水・スポンジブラシ・吸引併用などへの切り替えが推奨されます。

  3. 03 — DENTURE OVERNIGHT

    義歯を入れたまま就寝させる

    義歯を入れたまま就寝すると、義歯床下の粘膜が一晩中圧迫され、義歯性口内炎やカンジダ症の温床になりやすいと報告されています。基本は夜間外して洗浄・保管とされています。

  4. 04 — HARSH BRUSHING

    硬いブラシで強く擦る

    乾燥した粘膜や舌苔に対し硬いブラシで強く擦ると、出血・粘膜損傷を招き、本人の拒否を強める要因になります。湿潤剤で潤してから、柔らかいブラシで一方向に動かすのが原則です。

  5. 05 — SKIPPED AFTER MEAL

    食後の口腔ケアを省略する

    食後の食物残渣がそのまま残ると、就寝中の不顕性誤嚥の原因になります。朝・昼・夕の食後と就寝前、最低でも1日3回を目安にケアを組み込むことが望ましいとされています。

  1. 01 — DENTURE CARE

    義歯洗浄を毎日のルーチンに

    義歯は流水下で義歯用ブラシを使って機械的に汚れを落とし、その上で義歯洗浄剤につけ置きします。義歯ケースに名前を書いて取り違えを防ぐ、夜間は乾燥させない(割れの原因)、金属部分は変色する洗浄剤を避ける、といった運用が現場で定着しやすい工夫です。

  2. 02 — MOISTURIZE

    口腔湿潤を「ケア前」と「ケア後」に

    乾いた粘膜に直接ブラシをあてると、痂皮や乾燥した粘膜を剥がしてしまい出血・痛みの原因になります。口腔湿潤剤(ジェルやスプレー)で口腔内全体を潤してからケアに入り、ケア後にも保湿することで、次回のケアがしやすくなります。

  3. 03 — TONGUE

    舌のケアは「奥から手前」に一方向

    舌苔は誤嚥性肺炎の原因菌が定着しやすい場所のひとつとされています。専用の舌ブラシまたは柔らかいブラシで、奥から手前へ一方向に軽く動かします。強く擦らず、1日1回・短時間が原則です。乾燥が強い方は湿潤剤を併用します。

  4. 04 — RINSING

    うがい誘導は「少量・前傾・吸引」

    含嗽がうまくできない方には、少量の水を口に含んでもらい、頸部を前傾させ、吸引器で吸引する流れが安全です。吸引器がない場面ではスポンジブラシで水分を回収する方法もあります。「ぶくぶくしてください」が伝わらない方には、ジェスチャーや手本提示が有効です。

  5. 05 — BEFORE SLEEP

    就寝前のケアを必ず入れる

    不顕性誤嚥は就寝中に起きやすいため、就寝前の口腔ケアは特に重要とされています。歯面・舌・粘膜の汚染を可能な範囲で落とし、義歯を外して洗浄・保管、口腔湿潤を行ったうえで就寝してもらうのが基本の流れです。

CHECKLIST

施設口腔ケア
セルフチェック。

勤務するユニット・フロアで該当する項目を確認し、できていない項目があれば、委員会・カンファレンス・歯科への相談につなげる材料としてご活用ください。

  1. 施設への訪問歯科のご案内

    訪問診療

  2. 訪問歯科の対象になる方

    訪問診療

  3. 訪問歯科の流れ

    訪問診療

  4. オーラルフレイルの早期発見が、全身の健康寿命を守る

    口腔機能低下外来

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的判断を代替するものではありません。診断・治療方針は歯科医師または主治医にご相談ください。

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