FOR FACILITY STAFF
誤嚥性肺炎は、施設利用者さんの生命予後に直結する課題のひとつです。発症メカニズム、現場で守りたい実践のコツ、避けたい関わりを整理しました。
FOR WHOM
INTRODUCTION
誤嚥性肺炎は、唾液や食物・胃内容物が気道に入ることで肺に炎症が起きる疾患です。特に高齢の施設利用者さんでは、嚥下機能の低下と免疫機能の低下が重なり、発症リスクが高いことが知られています。
発症の引き金になるのは、誤嚥そのものよりも、口腔内に蓄積した細菌叢の量と質です。歯垢・舌苔・義歯のぬめりに含まれる嫌気性菌が、誤嚥された際に肺で増殖し肺炎を起こすと考えられています。つまり「誤嚥を完全に防ぐ」のではなく、「誤嚥しても重症化しにくい口腔環境を保つ」ことが、施設口腔ケアの目的のひとつです。
本記事では、施設で勤務する皆さまが日々の業務のなかで実践できる口腔ケアのポイントを、発症メカニズム・避けたい関わり・実践のコツ・チェックリストの順にまとめました。
監修
歯科医師 桐生 賢太
明海大学歯学部卒・2021年つむぎ歯科クリニック開業・訪問歯科を中心に診療
MECHANISM
REFERENCE
Yoneyama T らによる Lancet 1999;354(9177):515 の報告では、特別養護老人ホーム入所者を対象に介護職員等による口腔ケアを実施した群で、対照群と比較し肺炎の発症率および肺炎関連死亡率が低かったとされています。日々の口腔ケアが施設レベルでの予防策となりうることを示した代表的な報告として、現在も広く引用されています。
01 — POSTURE
ベッドをフラットにしたまま口腔ケアを行うと、洗浄液や唾液・歯垢を誤嚥するリスクが高まるとされています。ギャッジアップ30度以上を基本とし、頸部を軽く前屈させるポジションが安全とされています。
02 — TOO MUCH WATER
口腔機能が低下している方に大量の水で含嗽(ぶくぶくうがい)を求めると、誤嚥のリスクが上がります。少量の水・スポンジブラシ・吸引併用などへの切り替えが推奨されます。
03 — DENTURE OVERNIGHT
義歯を入れたまま就寝すると、義歯床下の粘膜が一晩中圧迫され、義歯性口内炎やカンジダ症の温床になりやすいと報告されています。基本は夜間外して洗浄・保管とされています。
04 — HARSH BRUSHING
乾燥した粘膜や舌苔に対し硬いブラシで強く擦ると、出血・粘膜損傷を招き、本人の拒否を強める要因になります。湿潤剤で潤してから、柔らかいブラシで一方向に動かすのが原則です。
05 — SKIPPED AFTER MEAL
食後の食物残渣がそのまま残ると、就寝中の不顕性誤嚥の原因になります。朝・昼・夕の食後と就寝前、最低でも1日3回を目安にケアを組み込むことが望ましいとされています。
01 — DENTURE CARE
義歯は流水下で義歯用ブラシを使って機械的に汚れを落とし、その上で義歯洗浄剤につけ置きします。義歯ケースに名前を書いて取り違えを防ぐ、夜間は乾燥させない(割れの原因)、金属部分は変色する洗浄剤を避ける、といった運用が現場で定着しやすい工夫です。
02 — MOISTURIZE
乾いた粘膜に直接ブラシをあてると、痂皮や乾燥した粘膜を剥がしてしまい出血・痛みの原因になります。口腔湿潤剤(ジェルやスプレー)で口腔内全体を潤してからケアに入り、ケア後にも保湿することで、次回のケアがしやすくなります。
03 — TONGUE
舌苔は誤嚥性肺炎の原因菌が定着しやすい場所のひとつとされています。専用の舌ブラシまたは柔らかいブラシで、奥から手前へ一方向に軽く動かします。強く擦らず、1日1回・短時間が原則です。乾燥が強い方は湿潤剤を併用します。
04 — RINSING
含嗽がうまくできない方には、少量の水を口に含んでもらい、頸部を前傾させ、吸引器で吸引する流れが安全です。吸引器がない場面ではスポンジブラシで水分を回収する方法もあります。「ぶくぶくしてください」が伝わらない方には、ジェスチャーや手本提示が有効です。
05 — BEFORE SLEEP
不顕性誤嚥は就寝中に起きやすいため、就寝前の口腔ケアは特に重要とされています。歯面・舌・粘膜の汚染を可能な範囲で落とし、義歯を外して洗浄・保管、口腔湿潤を行ったうえで就寝してもらうのが基本の流れです。
CHECKLIST
勤務するユニット・フロアで該当する項目を確認し、できていない項目があれば、委員会・カンファレンス・歯科への相談につなげる材料としてご活用ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的判断を代替するものではありません。診断・治療方針は歯科医師または主治医にご相談ください。
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