DENTIST & HYGIENIST
「今日は先生じゃなくて衛生士さんが来た」——訪問歯科をご利用のご家族から、ときどきいただく戸惑いの声です。訪問歯科は歯科医師と歯科衛生士、2つの職種の連携で成り立っています。それぞれが訪問で行うことの違いを、整理してご案内します。
SUMMARY — この記事の要点
01 — TWO ROLES
訪問歯科と聞くと、「歯医者さんが家に来て治療してくれる」というイメージが強いかもしれません。実際には、訪問歯科の現場では歯科医師と歯科衛生士という2つの国家資格職が、それぞれ異なる役割を担いながら連携しています。
大まかに言えば、歯科医師は「診断と治療」の専門家、歯科衛生士は「口腔ケアとその指導」の専門家です。歯科医師の訪問だけでは日々のお口の清潔を保ちきれず、歯科衛生士の訪問だけではむし歯や入れ歯のトラブルを解決できません。どちらか一方ではなく、両方の訪問を計画的に組み合わせることが、訪問歯科の基本的な考え方です。
「先生が来る日」と「衛生士さんが来る日」で内容が違うのは、手抜きでも省略でもなく、役割分担にもとづいた設計なのです。
02 — DENTIST
歯科医師の訪問の中心は、お口の状態を診断し、治療方針を立て、実際の治療を行うことです。原則として、診断・治療行為は歯科医師にしか行えないとされています。訪問先では、ポータブルの診療機器を使い、外来とほぼ同等の範囲の診療を行います。
お口全体の状態を診察し、痛みや不調の原因を特定します。全身状態やお薬も踏まえ、治療の優先順位と計画を立てます。
むし歯の治療、保存が難しい歯の抜歯など。全身状態と服薬(抗血栓薬など)を確認したうえで、安全に配慮して行います。
合わない入れ歯の調整、新しい入れ歯の製作、破損の修理。「噛める」を取り戻すことは、食事量と栄養状態に直結します。
「むせる」「飲み込みにくい」に対して、飲み込みの機能を評価し、食形態や姿勢の工夫、リハビリの方針を検討します。
口腔ケアの内容を歯科衛生士に指示し、主治医・ケアマネジャーと情報を共有します。訪問チーム全体の司令塔の役割です。
訪問で受けられる治療の詳しい内容は、訪問歯科で受けられる治療内容 のページでご紹介しています。
03 — HYGIENIST
歯科衛生士の訪問の中心は、専門的な口腔ケアと、ご本人・ご家族・介護スタッフへのケア指導です。原則として歯科医師の指示のもとで行われますが、その専門性は「清潔を保ち、機能を維持する」ことに特化しており、治療とは異なる価値があります。
日々の歯磨きでは落としきれない歯垢・歯石・舌の汚れを、専門の器具で清掃します。誤嚥性肺炎の予防に重要とされるケアです。
入れ歯に付着した汚れや細菌の除去、清掃方法・保管方法のご案内。入れ歯の不具合に気づけば、歯科医師に報告します。
その方に合った歯ブラシの選び方、磨き方、うがいが難しい場合の工夫など、毎日のケアを担う方への実践的な指導を行います。
お口や舌の体操、唾液腺のマッサージなど、歯科医師の方針にもとづく機能訓練をサポート。「食べる力」の維持を支えます。
定期的に訪問するからこそ気づける小さな変化(腫れ・乾燥・食事量の低下など)を記録し、歯科医師へ報告。早期対応につなげます。
訪問での口腔ケアの詳しい内容は、訪問口腔ケアのご案内 をご覧ください。
04 — COMPARISON
2つの職種が訪問で行うことを、項目ごとに整理しました。あくまで一般的な役割分担の目安であり、実際の分担は患者様の状態や診療計画によって調整されます。
| 項目 | 歯科医師の訪問 | 歯科衛生士の訪問 |
|---|---|---|
| 中心となる役割 | 診断・治療・治療計画の立案 | 専門的口腔ケア・ケア指導 |
| むし歯・抜歯 | 治療を行う | 行わない(異変の観察・報告) |
| 入れ歯 | 製作・調整・修理 | 清掃・衛生管理・使用状況の確認 |
| 口腔ケア | ケアの方針を決定・指示 | 専門的清掃を実施・日常ケアを指導 |
| 飲み込み(嚥下) | 機能の評価・リハビリ方針の決定 | お口の体操など機能訓練の支援 |
| 訪問の頻度の目安 | 治療期は計画に応じて/安定期は月1回程度 | 月1〜4回程度(状態・制度により変動) |
| 主に使う保険 | 医療保険が中心 | 医療保険のほか、介護保険(居宅療養管理指導)の場合がある |
※ 職種ごとの業務の範囲は法令等で定められており、上記は一般的な役割分担をわかりやすく整理したものです。個別の診療内容は歯科医師の判断により決まります。
05 — COMBINATION
実際の訪問歯科では、2つの訪問を時期に応じて組み合わせます。たとえば、はじめは入れ歯の不調やむし歯の治療のために歯科医師の訪問が中心となる「治療期」。治療が一段落したら、歯科衛生士の定期的な口腔ケアで清潔と機能を保つ「維持期」へと移行していきます。
維持期にも歯科医師が定期的に診察に伺い、新たなトラブルの早期発見に努めます。維持期の口腔ケアの中で歯科衛生士が異変に気づけば、すみやかに歯科医師の診療につなげる——この循環があることで、「悪くなってから治す」のではなく「悪くなる前に気づく」体制がつくれます。
当院では、初回の診察で全体の状態を把握したうえで、歯科医師と歯科衛生士の訪問をどう組み合わせるか、患者様お一人おひとりの状態に合わせて計画を立ててご提案しています。ご利用開始までの具体的な手順は、訪問歯科のご利用までの流れ をあわせてご覧ください。
06 — INSURANCE
2つの訪問は、保険の使われ方にも違いがあります。歯科医師の訪問による診療(むし歯治療・入れ歯・抜歯など)は、医療保険が中心です。訪問1回ごとの基本料として「歯科訪問診療料」(1割負担で約1,000円前後。訪問先や同一建物内の診療人数などの区分により変動します)がかかり、これに治療内容に応じた費用が加わります。
一方、歯科衛生士による定期的な口腔ケア・指導は、医療保険で行われる場合のほか、要介護認定を受けている方では介護保険の「居宅療養管理指導」として行われる場合があります。どちらの保険が使われるかは、要介護認定の有無や提供内容によって決まり、請求の手続きは当院で行いますので、患者様側で書類を作成いただく必要はありません。
費用の見通しは、初回の診察後に個別にお見積もりをお伝えします。ご不明な点は、訪問ダイヤル(049-298-3203)にお気軽にお問い合わせください。
REFERENCES — 参考資料
SUPERVISOR
DIRECTOR
桐生 賢太
つむぎ歯科クリニック 院長
明海大学歯学部卒業。一般歯科診療に加え、訪問歯科診療・高齢者歯科に注力。坂戸市・鶴ヶ島市を中心に、ご自宅・施設での口腔ケアと治療を通じ、通院困難な方々の生活の質向上に取り組んでいる。多職種連携を重視し、ケアマネジャー・主治医・ご家族との情報共有を大切にしている。
最終更新日:2026年7月24日
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訪問歯科のご相談は、訪問ダイヤルへ。歯科医師と歯科衛生士の訪問の組み合わせ方も、状態を伺ったうえでご提案します。