つむぎ歯科クリニックTSUMUGI DENTAL CLINIC
入れ歯を外したままにするリスク

DENTURE NON-USE RISK

入れ歯を外したままにするリスク——「使わない」が招くお口と全身の変化

「合わないから」「痛いから」と、入れ歯を外したまま過ごしていませんか。使わない期間が長くなるほど、食事・お口・顎に少しずつ変化が起こることがあります。

はじめに

その入れ歯、
引き出しの中で眠っていませんか。

せっかく作った入れ歯を「なんとなく合わない」「食事のときだけ外している」という理由で使わなくなってしまう——これは、決して珍しいことではありません。ただ、外したままの期間が長くなると、噛む力や食事内容、お口や顎の状態に少しずつ影響が及ぶことがあります。

このコラムでは、入れ歯を使わないままにした場合に起こりうる変化と、外したままにしないための対処法、そしてご家族が気づけるサインをご紹介します。

この記事の要点

  • 入れ歯を外したままにすると、食事量の低下や栄養の偏りにつながることがあります。
  • 噛み合わせの変化や残った歯への負担など、お口・顎にも変化が起こりえます。放置期間が長いほど再装着が難しくなることもあります。
  • 合わない原因の多くは調整・修理で改善が期待でき、通院が難しい方は訪問歯科でも対応できます。

COLUMN INDEX

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SUPERVISOR

つむぎ歯科クリニック 院長 桐生賢太

監修:桐生 賢太(きりう けんた)

つむぎ歯科クリニック 院長/歯科医師

外来診療と並行して訪問歯科診療に従事し、高齢者の口腔機能管理・義歯調整に取り組む。日本老年歯科医学会員。院長プロフィール →

最終更新日:2026年7月24日

NOT RARE

「合わないから外したまま」は
珍しくない

「入れ歯を作ったけれど、痛くて使えない」「噛むと当たって外してしまう」「話しづらいので家では外している」——訪問歯科の現場でも外来でも、こうしたお話は本当によく伺います。決してご本人の使い方が悪いわけではありません。

入れ歯は、お口の粘膜と顎の骨の上に載せて使う道具です。体重の増減や加齢によって顎の形は少しずつ変わっていきますし、入れ歯の人工歯がすり減ったり、床(ピンク色の部分)とお口の間に隙間ができたりすることもあります。作った当時はぴったりでも、時間の経過とともに「合わなくなる」のは、ある意味で自然な変化です。

問題は、合わないまま「使わない」という状態が長く続くことです。次の章から、外したままにした場合に起こりうる変化を順に見ていきます。

  1. 01 — INTAKE

    食事量の低下

    噛みにくいと、食事に時間がかかったり、途中で疲れてしまったりして、一回の食事量が減ることがあります。「食べるのが面倒」と感じるようになると、食事そのものへの意欲が下がり、体重や体力の低下につながることがあります。

  2. 02 — BALANCE

    栄養の偏り

    やわらかい麺類やパン、おかゆなど、炭水化物中心の食事に偏りがちになります。肉や魚、生野菜などの「噛む必要がある食品」を避けるようになると、たんぱく質やビタミンの摂取が不足し、低栄養につながることがあります。

  3. 03 — LIMITATION

    食べられる物の制限

    「食べたい物」より「食べられる物」で献立が決まるようになります。好物を諦める、外食や集まりの誘いを断る——食の楽しみが狭まることは、生活の質や社会とのつながりにも影響することがあります。

ORAL CHANGES

お口・顎への影響

入れ歯を使わない影響は、食事だけにとどまりません。お口の中と顎にも、時間とともに変化が起こりうることが知られています。

  1. 噛み合わせの変化

    入れ歯が支えていたスペースが空いたままになると、残っている歯が傾いたり、向かい合う歯が伸びてきたりして、噛み合わせ全体のバランスが変わってしまうことがあります。

  2. 残った歯への負担

    入れ歯が担っていた噛む力を、残っている歯だけで受け止めることになります。特定の歯に力が集中すると、歯の揺れや破折、歯周病の悪化につながることがあります。

  3. 見た目の変化

    入れ歯は唇や頬を内側から支える役割も果たしています。外したままでいると、頬がこける・口元にしわが寄るなど、お顔の印象の変化が起こりうるとされています。

TIME MATTERS

放置期間が長いほど、
再装着が難しくなりうる

「そのうち、またはめればいい」と思っていても、外したままの期間が長くなるほど、再び入れ歯を使うことのハードルは上がりやすくなります。

入れ歯を使わない間にも顎や粘膜の状態は変化していくため、久しぶりに入れてみたら以前より合わなくなっていた、ということが起こりえます。また、噛み合わせが変化してしまった場合は、調整だけでは対応が難しく、作り直しが必要になることもあります。

入れ歯に「慣れる」こと自体にも、お口の筋肉や感覚の順応が必要です。使わない期間が長いほど、再び装着したときの違和感が強く感じられ、慣れるまでに時間がかかる場合があります。だからこそ、「合わないな」と感じた時点で早めにご相談いただくことが、いちばんの近道です。

「使わない」期間は、
そのまま「合わなくなる」期間。
——気づいたときが、相談のタイミングです。
  1. 01 — 調整(当たる・痛い・外れやすい)

    痛い場所を削って当たりを和らげる、噛み合わせを整えるなど、その場でできる調整で改善が期待できるケースは少なくありません。数回の調整で快適に使えるようになることもあります。

  2. 02 — 修理・裏打ち(ゆるい・割れた)

    顎とのすき間が原因でゆるい場合は、内面に材料を足す「裏打ち(リライン)」で適合の改善が期待できます。破損やバネの不具合も、多くの場合は修理で対応できます。

  3. 03 — 作り直し(調整で対応できない場合)

    顎の変化が大きい場合や、長期間使わずに合わなくなってしまった場合は、新しく作り直すことをご提案します。今のお口の状態に合わせて設計するため、以前より使いやすくなることもあります。

  4. 04 — 通院が難しい方は、訪問歯科で

    入れ歯の調整・修理・新製は、訪問歯科診療でもご自宅や施設で対応できます。「通えないから」という理由で入れ歯を諦める必要はありません。

費用について

入れ歯の調整・修理・作り直しは、基本的に健康保険が適用されます。訪問診療の場合は治療費に加えて歯科訪問診療料がかかりますが、1割負担の方で1回あたり約1,000円が目安です(負担割合・治療内容により異なります)。

FAMILY SIGNS

ご家族が気づくサイン

ご本人は「困っていない」とおっしゃることも多いものです。次のようなサインが見られたら、入れ歯が合っていない可能性を考えてみてください。

  1. 食事中に入れ歯を外す

    本来いちばん使いたい場面で外すのは、「着けている方が噛みにくい・痛い」というサインかもしれません。

  2. 引き出しやケースにしまったまま

    「いつの間にか使わなくなっていた」入れ歯が保管されたままなら、合わなくなっている可能性があります。しまい込んだ期間が長いほど、早めの受診をおすすめします。

  3. やわらかい物ばかり選ぶようになった

    好物だった硬めの食品を残す、麺類やおかゆが増えた——食の変化は、噛む機能の変化を映すことがあります。

  4. 外食や集まりを避けるようになった

    人前で食べること・話すことへの気後れが背景にあることも。口元を気にする様子が見られたら、声をかけてみてください。

介護中のご家族に向けては、介護のなかでの入れ歯トラブルへの対応も別ページで詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。

REFERENCES

参考資料

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状や治療方針は個人差がありますので、具体的な診断・治療については歯科医師にご相談ください。

CONTACT

その入れ歯、諦める前にご相談ください

合わない入れ歯の調整・修理・作り直しのご相談を承っています。通院が難しい方には、ご自宅や施設への訪問歯科診療でも対応いたします。

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